pipin

英語の記事や洋楽の翻訳したり日記書いたり。翻訳を勉強しています。

Sea of Solitude(孤独の海)

www.gameinformer.com

メンタルヘルスはゲームで取り扱うには難しいテーマである。ゲーム性と難しいテーマに対する知見との微妙なバランスを取る必要があるが、その二つが意味深く絡み合った時、貴重な体験を得ることができる。CelesteやHellblade: Senua’s Sacrificeといったタイトルがこれに当たるが、Sea of Solitudeもあえて同様のテーマに挑む。その世界観は陰鬱でありながら美しく、数人のキャラクター達はいかにメンタルヘルスに生活を蝕まれているか明かす。

 

Sea of Solitudeの主人公ケイは、自身の孤独によってモンスターに変身した少女である。人間であった頃の朧気な記憶と共に、一部が水中に沈没した町を探索する。ゲームを進めると、すぐに世界で一人だけではないことを悟り、過去の過ちを正すために家族(彼らもまた魔物になっている)を助ける自分探しの旅に出る。Sea of Solitudeは水面下に隠された闇の部分となる複雑な背景を取り入れ、たまに躓きつつも全体的に成功している。

 

徒歩やボートで移動し、屋根を伝って町を抜け、危険を避けつつ旅を進めていく。そして、なにやら巨大なモンスターと出会う。とにかく巨大で、ゾクッとするような雄たけびを上げるモンスターが辺りを徘徊しているのだ。筆者は次はどんなモンスターが待っているのか楽しみになっていた。それに世界が危険を反映して、ケイの両親が口論すると、一気に日没が進んで激しい波が打ち付けるなどの様子も楽しみだった。

 

ケイはそれぞれのモンスターとの繋がりがあり、彼女の内なる闇の反映であったり、苦痛を受けた家族の具現化であったり、モンスターとのエンカウントに面白い深みを加えている。筆者は主要な敵それぞれに共感し、傷つけたくないと思った。幸運にもこのゲームでは敵を傷つける必要がなく、ボス戦は通常の戦闘とは違い、倒すのではなく瓦礫を探索して、ケイが敵の抱える問題を理解し、相手の苦痛をハッキリと見えるようになり、例えば行き詰った関係を解消させるなど、敵の抱える問題を解決する手助けをすればよい。このクレバーな手法でプレイヤーの中にも共感が芽生えるのである。

 

瓦礫の探索はSea of Solitudeの目的の一つである。瓦礫ポイントは黒い煙が渦巻いている光るオーブが表示される。煙を除去するにはジャンプで足場を渡って小型のオーブを集め、光るパズルをすればよい。閃光弾を発射することも可能で、次の目的地のガイドになるのだが、これは唯一の戦闘手段でもある。影の敵を閃光で照らし、次に進むために倒さないといけない場面もあるし、ゲームが進行すると閃光弾を味方に変身させて、手の届かないオーブを取るために、崖へジャンプさせることもできる。敵と戦ったり誘導しても、あまり深く考える必要がないのであまり面白さを感じない。それよりも場面が移る際のナレーションで、ケイの家族に何が起こったのか仄めかす点が筆者は気に入った。

 

影の敵を倒すといった謎解き要素は浅い。たとえば、通りたいドアから敵を離すためにこちらに引き付ける程度だ。ただ仕掛けが簡単なのはそれほど気にならなかった。進行がスムーズだと物語がスラスラと進み、物語はSea of Solitudeの醍醐味であるからだ。

 

キャラクターには深みがあり、瓦礫を探索すると更にケイや周囲の人物について学べる。それぞれの問題はメンタルヘルスに根差しており、たとえばケイの恋人は重度の鬱病に悩まされており、その後イジメに遭っていることを知る。どの感情も真実味を感じるのだが、安直なイジメエピソードは雑に感じられた、短絡的に自殺に結び付けようとするところなど顕著である。他にも、誇張されて違和感を感じる記述や、深層の人格のテーマを性急に飛ばした時にも感じられた。

 

しかし、ゲーム内でその世界をありのまま表現する瞬間は精彩を放っており、キャラクター達が自身の現実と対峙するようになって、彼らの感情を強調するように天候と情景が変化する様を見るのは楽しい。破綻した恋愛関係を探索する時は街が雪に覆われて凍てつき、建物が蒸気を吹き出す弁になって父親の憤怒を上手く反映するなど、街の様子が印象に残った。

 

大雨は危険が迫っている、晴れは安全を示すなど、探索の間は天候が大きな役目を負う。この単純なシステムでプレイヤーに恐怖に備えるタイミングをうまく伝えているのだが、驚かせてくる回数が尋常ではない。暗い水中を魚のモンスターが泳いでおり、捕まると鋭い歯で八つ裂きにされてしまう。濁った海では幽霊の手が飛び出してくることがあり、ケイが触れると海の底に沈められてしまう。こういった恐怖感がSea of Solitudeの空虚な世界によって一層おぞましく感じられる。

 

ゲームにおいて空虚な世界はネガティブに捉えられがちであるが、このゲームにとっては効果的なホラー要素であるだけでなく、ケイの心情を表したり、謎に深みを持たせるなど、適切に感じられる。筆者はケイが孤独である理由や、モンスターだけが生き残っている理由をずっと不思議に思っていた。その答えがすべて明示されることはないのだが、自分なりの解釈や、散りばめられたメッセージをかき集める作業を楽しめた。

 

Sea of Solitudeはメンタルヘルスの症状に苛まれる当人だけでなく、その愛する周りの人々の生活も荒廃させるという深い洞察を与えてくれる。ケイは傾聴の価値を理解し、自身の過ちを受け入れ、家族に共感するだけではなく、常にやり直しが効くわけではないことを受け入れて多くのことを学んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

辻褄を合せるために表現を陳腐にしている気がする

melancholy憂鬱

ravaged荒廃

cast 配役する

intriguing(ポジティブな意味で)複雑

grandiose雄大

bicker 口論する

eradicate根絶する

 ledges岩棚

lackluster 鈍重な

clumsy不格好

stilted誇張した

barren空虚な

speak for itself自明の理

 

ボキャブラリが足りない