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北瀬佳範氏とファイナルファンタジー10を振り返る

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ファイナルファンタジーはシリーズを通して、ゲーム機の可能性を最大限引き出すことに定評がある。1997年にFF7がプレステで発売した時は、移行したハードを効果的に利用し、3Dグラフィックとムービーシーンの新時代RPGの牽引役を担った。プレステからプレステ2へ移行した際はビジュアル面で劇的な進化はなかったものの、新機種で初の作品として、FF10ストーリーテリングの新世界を切り開いた。

 

数多くのFF10たる定義は単なるFFシリーズの一作として、グラフィックのクオリティの格段の進化だけに留まらない。町やダンジョンで平面の背景に甘んじることなく、3Dの環境を徹底している。世界全体とフィールドの境界を排除したことで、世界に生き生きと繋がっている感触を与えた。吹き替えを入れたことでプレイヤーはキャラクター達の息遣いを感じられる。たとえ一部のプレイヤーがティーダとユウナのワンシーンを嘲笑しようともである(実際に二人が作り笑いをするシーンがある)。どれも現在のFFにおいてスタンダードになっている要素だが、その起源はFF10にある。

 

また本作はFFシリーズのテーマを力強く進化させた。スピラの世界では、万物に死の螺旋が流れている。「シン」と呼ばれる怪物が無差別に町を破壊して生物を殺す。そこで召喚士は生贄となってシンを食い止め、ほんの数年間の平和を稼がねばならない―が、シンは何度も蘇る。更に、キャラクター達も彼らに立ちはだかる課題と共に生きている。ユウナは父親の例に応えたい、ティーダは父親に見捨てられた経験と格闘する。こういった苦悩はキャラクター達の会話や、表情が豊かになったことで明確に描かれ、悲哀と願望がないまぜになったユニークな色彩は、テレビゲームではほぼ達成し得なかった手法で共感を呼んだ。

 

上記はほんの表面に過ぎない。機知に富んだカウントタイムバトルシステムで、仲間たちを自在に交代させたり、バラエティー豊富なミニゲーム(水中サッカーのブリッツボール等)が旅に彩りを加えている。この面白い仕組みと物語のコンビネーションがシリーズ初、直接の続編を産みだしたFF10の人気の所以であり、一部のファンは今も更なる続編を期待している。今後の展開はさておいて、その実績は明解だ。FF10RPGのランドマークであり、本誌は名作の背景にあった意図を知るべく、プロデューサーの北瀬佳範氏と対談する機会を得た。


FF10プロジェクトの初期段階では、チームでどういった目標を掲げましたか
北瀬:FF7FF8と続編と、それぞれのシリーズはすごく西洋的・未来的な世界観を描いていました。脚本の野島(一成)が「新作はもっと強いアジアテイストの世界を描こう」と提案したんです。私達に馴染み深い文化・慣習に基づいたファンタジー世界を創造しようというアイディアが、その時は実に斬新に感じられて、その通りにすれば必ず成功すると確信していました。

 

FF10はシリーズ初のPS2の作品で、吹き込みが実現したわけですが、それでゲーム作りへのアプローチに変化がありましたか
北瀬:それまではシナリオライターが書いた会話がそのままゲームに反映されていました。しかし声の録音作業が加わって、声優さんとその創造性も入ります。彼らの演技に調整して会話が改善して、それまで以上にキャラクター達が精彩を放つようになりました。その化学反応は当時予想できていなかった我々にとって、喜ばしい誤算でした。

 

あの「笑顔の練習のシーン」は悪い評判になっていますが、プレイヤーの反応にはどう感じていますか
北瀬:現実の世界においても、ロマンスの関係を築く二人の行動というのは、後で思い返すと概して恥ずかしい思い出になります。私はあのシーンは実に上手く心象を表せたと思います。もちろん今もファンに笑われますが、それはきっと誰の心にもある「何か」にしっかりと触れられた、18年経った今でも記憶に残るシーンであるからだと思います。

 

ゲームをリリースする前に、ブリッツボールはゲームエクスペリエンスを阻害すると思いましたか
北瀬:いいえ、その反応はまったく予想していませんでした。ブリッツボールは私の自信作でした(半分は自己満足のためでもありますが)。元々は物語の進行に必要なゲームではなく、プレイヤーが任意でプレイできる追加機能として予定していたからです。しかし結局ブリッツボールは物語に必須ルートになり、強力な武器を手に入れるにはブリッツボールをプレイする必要があるように変更しました。これによって悩んだファンの皆様には大変申し訳なく思っていますが、当時のゲームの特徴として捉えて頂けると幸いです。

 

七曜の武器を手に入れたいプレイヤーに、雷避けとチョコボレースを難しく設定したことについて後悔しませんでしたか。ご自身でクリア可能でしたか。
北瀬:ミニゲームを担当した開発者たちはもちろんクリアしていました。私も個人で雷避けはクリアしましたが…(咳払い)。当時のゲームとして後悔はしていませんが、例えばもし、今日リメイクするとしたら、もうちょっと考えるかもしれません。

 

最終的にカットしたけれど、入れたかった要素などはありますか
北瀬:当初のプロットでは、プレイされたオープニングのザナルカンドのシーンはもっと長かったです。そのプランで行くと、スピラに飛ばされる前にFF7にちょっと似た世界を体験できていました。

 

FF10は大量の破壊と死を描いて、全体的に悲壮感が漂っていますが、開発中に物語が重すぎると感じたことはありますか
北瀬:フル3Dグラフィックとキャラクターのボイスを実装して、どれほどファンにストーリーの感情が強く伝わるか想像していませんでした。開発中に自分が作ったゲームで泣くのも初めての体験でした。それと同時に、ゲームは物語やドラマを語るメディアに進化していると感じたので、一切心配しませんでした。

 

ジェクトとティーダは異界で仲良くなれたでしょうか
北瀬:親父は少年にはライバルとしても映りますから、多分異界でもずっと同じでしょう。

 

FFシリーズのリリースするスピードに驚きませんか。1999~2003年は毎年新作(8,9,10,11,10-2)が発表されています。どうやっていたのでしょうか
北瀬:そうですね。100人にも満たないチームで1年間で一つゲームを開発していたことは本当に驚きです。今ではどんなにプロジェクトで増員したとしても、FFと同等規模のゲームの開発期間を縮めることはほぼ不可能でしょう。我々が現在作っている3DCGのゲームは、映画製作のように巨大で洗練された製作フローを取り入れているので、もう元の製作フローには戻れません。ですのでプロジェクトの初期設計段階にはかなり時間をかける必要があります。当時は開発を始めた時期に、ゲームデザインを十全に肉付けしていないことが何度もありました。たとえば、FF6で崩壊後の世界のシナリオはゲームの開発がかなり進んだ後でも準備できていませんでした。

 

公式と一切関係なく、FF10-3の可能性についてスクエニ社内で話が盛り上がることはありませんか
北瀬:FF10の製作に関わった仲のいい人達数人と話題に上がることは時々あります。ただそれは単なる雑談で実現に向けた動きは全くありません、プロジェクトが始まれば間違いなく数百人のスタッフが関わる巨大プロジェクトになります(その上先に終わらせないといけない現行のプロジェクトを抱えています)。